解体お役立ち情報

建物を解体した後の
土地・建物の固定資産税

固定資産税とは
毎年1月1日時点で土地や建物などの不動産に課せられる税金です。
各市町村が保管する固定資産税課税台帳を基に、対象の不動産の所有者に固定資産税の支払いが義務付けられています。
例えば、前年の12月31日までに建物が解体されると次年度には建物の固定資産税は課税されなくなります。しかしながら、1月1日をまたいで建物が解体されると、当該年度は建物が存在していなくても1年間分固定資産税が課税されることになります。
建物を解体すると固定資産税は“高くなる”?
建物を解体して更地にすると、その建物が存在していた土地の固定資産税額は解体前と変わり、税額が増えてしまいます。
しかし建物を解体したから固定資産税が高くなったのではなく、『固定資産税が元の標準的な税額に戻った』という表現が正しい説明になります。
税金が元通りに課せられるとは?
固定資産税とは土地や建物を所有している所有者に課される市町村税ですが、居住用の建物が建っている土地については、その税額が軽減される「住宅用地特例」が適用されます。
これによって建物の敷地に課される固定資産税額は軽減されます。
『住宅用地特例』とは住宅用地の減税措置
『住宅用地特例』とは住宅一戸分につき200平方メートルまでの小規模住宅用地に対して、固定資産税と都市計画税で受けられる減税措置です。
固定資産税は課税標準の1/6に軽減、都市計画税は1/3に軽減されます。
もしも住宅用地が200平方メートルを超える場合でも、200平方メートルを超えた分に対して固定資産税は課税標準の1/3に軽減、都市計画税は2/3に軽減されます。
解体により住宅用地特例の適用がなくなり通常の税額になる
建物が取り壊されると、建物の固定資産税が翌年から課税されなくなりますが、住宅用地特例が適用されなくなるため、土地に付いては、課される通常の固定資産税額の支払いが求められます。
建物が解体されると固定資産税が高くなるという印象がありますが、正しくは、解体により土地の住宅用地特例の適用がなくなり通常の固定資産税額が課されるようになるのです。
その結果、固定資産税は建物があった時からすると、税額は約3~4倍、最大で約6倍になる場合もあります。
建物の解体によって都市計画税も減税措置が無くなる
不動産に課される税金は固定資産税の他に「都市計画税」があります。都市計画税とは、市区町村が建物と土地との所有者に課す地方税のことで、集められた税金は都市計画事業等の費用として用いられています。
建物が解体されるとその敷地の分の都市計画税についても特例が適用されなくなるため、通常の税額が課されるようになります。
都市計画税の税率は固定資産税の課税評価額の0.3%を上限としていますが、具体的な税率は各自治体によって決められます。
建物を解体した後の手続き
既登記の建物に付いては、その所有者から「建物滅失登記」を管轄法務局に一カ月以内に申請する事が義務付けられています。申請が受理されて、登記手続きが完了すると、法務局から市町村に登記された旨が伝えられるため市町村への解体した旨を届け出る必要が無くなります。建物の滅失登記手続きを解体後申請しなかった場合は10万円以内の過料が課せられる場合が有ります。
また、未登記建物を解体した場合は、法務局への滅失登記の申請は不要ですが、市町村への届出が必要な場合が有ります。石狩市の場合ですと、税務課に「家屋の取壊し届」を提出する事になります。この手続きは、市町村で解体した事実が把握されていなかった場合に次年度以降も建物の固定資産税が課税され続ける事を避ける為です。
未登記家屋の所有者を変更したとき
未登記物件については税務課に「未登記家屋の所有者変更届」を提出する事で固定資産税の納税義務者を変更することができます。
建物滅失登記の申請方法
建物滅失登記は、建物の解体が行われた土地を管轄する法務局に申請して行います。(石狩市の場合は札幌北法務局が管轄法務局になります。)
申請に必要な主な書類は、建物の取り壊しを行った解体業者によって発行される建物滅失証明書、解体業者の印鑑証明書と登記簿謄本(登記事項証明書)です。
また、その他に必要な書類が発生する場合が有ります。
建物滅失登記を行う際には、ご自身で法務局に出向きご自身で手続きする事も可能ですが、当社でご紹介する土地家屋調査士に手続きの代行を依頼することも可能です。
その場合、約5万円の登記費用がかかります。
固定資産税の計算方法
固定資産税額を算出するための基本的な計算式は次の通りです。
固定資産税額 = 固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
土地の場合は、公示価格の概ね70%が固定資産税評価額の目安と言われていますが、その土地のある場所や形状などから総合的に判断がされます。
尚、負担調整措置が取られる場合がため、この計算式だけでは該当年度の正確な固定資産税額を求める事はできません。
都市計画税の計算方法
固定資産税の他に不動産について課せられる都市計画税は次の式で求められます。
都市画税額 = 固定資産税評価額×0.3%(制限税率)
建物を解体しなくても土地の固定資産税の特例が使えない『特定空家』の場合
近年増加している空き家の管理を行き届かせるため「空き家対策特別措置法」が2014年に制定されました。
「特定空家」とは、倒壊の恐れや衛生上の問題があると判断される空き家、または地域の景観を損ねると自治体が判断し生活環境の保全の観点からふさわしくないとみなされた空き家のことです。
「特定空家」として指定されると、その持ち主には対象となる空き家について修繕などの注意や勧告がされ、さらにその空き家と敷地には、固定資産税と都市計画税の住宅用地特例は適用されなくなります。

アスベストが含まれる建物の解体

アスベストとは
アスベストは繊維状に変形した天然鉱物の総称で、別名「石綿(いしわた)」とも呼ばれます。アスベストの成分となる鉱石には「クリソタイル(⽩⽯綿)、アモサイト(茶⽯綿)、クロシドライト(⻘⽯綿)」などがあります。 アスベストは数々の優れた性質を持っていて、かつては「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。戦後の高度経済成長期には、家庭用品や自動車の部品、建材など広く使われています。
アスベストの代表的な性質
  • 耐熱性に優れている
  • 曲げや引張りに強い
  • 熱絶縁性を有する
  • 耐アルカリ性に優れている
  • 耐摩擦性に優れている
  • 電気絶縁性を有する
上述のような性質を持つアスベストは一般住宅においても「屋根材、外壁材、内装材、吹付け材、断熱材」などに利用されましたが、現在は人体への有害性が問題視され使用禁止になっています。
アスベスト使用に関する経緯
昭和50年 労働基準法特定化学物質等障害予防規則(特化則)の改正により、⽯綿含有量「5重量%」を超える吹き付けが原則禁⽌。
平成7年 特化則の改正により、⽯綿含有量「1重量%」を超える吹き付けが原則禁⽌。
平成16年 労働安全衛生法施⾏令の改正により、石綿含有建材の製造が禁止。
平成17年 石綿障害予防規則制定により、⽯綿含有量「1重量%」を超える吹き付けが完全禁⽌。
平成18年 労働安全衛生法施⾏令の改正により、⽯綿が重量の0.1%を超える製品の輸⼊・製造等が全⾯禁⽌。
※建築物等においては、平成16年(2004年)以前に建てられたものはアスベスト含有建材が使われている可能性があります。自宅にアスベストが使われているかどうか、ひとつの判断目安になります。
アスベストの危険性
アスベストは、石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれ、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物です。1960年代には、アスベストを使用した建築素材がビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として広く使われました。当時は、アスベストは「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、値段が安く、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など多様な機能を備えていました。
しかし、2005年に農業機械・鉄管等の鋳物製品のメーカーが、労働者74名が中皮腫などの石綿関連疾患で死亡していたことを明らかにし、アスベストの健康被害が社会問題となりました。アスベストは繊維が極めて細いため、劣化すると粉じんとなって飛散し、長時間空気中を浮遊します。人が吸入すると、一部は体外に排出されますが、肺まで入り込んだアスベストは体内で分解・除去できません。これが石綿肺や中皮腫、肺がんの原因となると考えられています。
アスベストの恐ろしいところは、吸い込んですぐに疾患が起こるわけではなく、数十年後に中皮腫や肺がんなどの病を発症する原因となることです。そのため、アスベストは「奇跡の鉱物」から「静かな時限爆弾」へと変貌していきました。現在では、予防や飛散防止が図られているものの、引き続き注意が必要です。
アスベストが使用されていた箇所には、吹き付けアスベスト、吹き付けロックウール、アスベスト含有保温材、石綿含有摩擦材などがありました。これらの材料は、現在では輸入が禁止されています。アスベストの危険性を正しく理解し、適切な対策を取ることが重要です。
アスベストの危険レベル
アスベストのレベルは、体内へ侵入する原因である「発じん性」の度合いによって区分されています。主に3つのレベルに分類されます。
  1. レベル1発じん性が著しく高い 綿のようなタイプのアスベストが該当します。
    解体時に繊維が飛び散りやすく、大変危険です。
    主な建材の例: アスベスト吹き付け材や石綿含有ロックウール吹き付け材。
    主な使用箇所: 耐火建造物の梁や柱、エレベーター周り、ビルの機械室など。

  2. レベル2発じん性が高い 保温材や断熱材として使用されているものが一般的です。
    空気を含んでいて軽く、密度が低いため、崩れると大量に飛散する恐れがあります。
    主な建材の例: 配管に巻き付けてある保温材や断熱材。
    主な使用箇所: 断熱や吸音のために使用されるケースが多いです。

  3. レベル3発じん性が比較的低い 硬めの板状に成形されたアスベストが該当します。
    飛散の危険性は低いです。
    主な建材の例: 石綿含有成形板、セメント管、押出成形品など。

アスベストを使用した建物の解体に必要な費用
アスベストを使用した建物の解体費用の目安をご紹介しますが、作業レベルやアスベスト含有建材の使用量など、諸条件によって大幅に価格が変わることにご留意ください。
  • 屋根瓦

    アスベストを含有した屋根材(石綿スレートなど)の撤去費用は、30坪2階建ての住宅で20万円程度です。アスベストはセメントで固められた状態で、比較的安全に除去できます。作業レベルは「3」に分類されることが多いでしょう。アスベストが飛散しないように、散水や薬液散布で屋根材を湿潤化してからはがします。

  • 外壁

    アスベストを含有した外壁の撤去費用は、30坪2階建ての住宅で110万~130万円程度です。屋根よりも面積が広く、比較すると価格が高くなります。屋根材と同様に比較的安全に除去できるので、作業レベルは「3」に分類されることが多いでしょう。外壁を水や薬液で湿らせながら取り外します。

  • 内壁や配管

    内壁や配管にアスベスト含有建材が貼り付けられている場合は、1平方メートルあたり1~6万円程度の除去費用がかかります。建物全体では、数百万円程度かかるケースもあります。内壁や配管に使われるアスベスト含有建材は濃度や飛散性が高く、作業レベル「2」に該当するものが多いです。作業者は防塵マスクや、必要に応じて防護服を着用して作業します。

  • 天井、柱、梁

    天井や梁、柱などにアスベストが吹き付けられている場合は、撤去に1平方メートルあたり1.5~8.5万円程度かかります。建物全体で数百万円程度になることもあります。アスベスト含有の吹き付け材はもっともアスベスト濃度と飛散性が高く、作業レベル「1」に分類されます。

アスベストを含む建物を解体する場合の流れ
  1. 01建物の事前調査 解体業者(受注者)は建物の現地調査を行い、分析結果を施主(発注者)に書面で報告する義務があります。調査結果は資料として保管するとともに、工事場所にも掲示しなければなりません。
    アスベストを使った建物の解体では、作業基準の遵守を妨げる行為が禁止されています。施主においては、過剰な値引きや工期短縮などが該当するのでご注意ください。

  2. 02必要書類の提出 作業レベル1や2に該当する解体工事は、事前に届出が必要です。

    届出名 工事計画届出書 特定粉じん排出等作業実施届出書 建築物解体等作業届
    レベル1
    レベル2 不要
    届出先 労働基準監督署長 各都道府県知事 労働基準監督署長
    期日 作業の14日前まで 作業の14日前まで 作業日まで

  3. 03近隣住民への告知 解体工事をおこなう際は「石綿ばく露防止対策等の実施内容」を作業現場の見やすい場所に掲示する必要があります。

    • 石綿使用の有無
    • 適切な届け出を行っている旨の明示
    • 石綿のばく露防止措置の概要
    • 石綿粉じんの飛散防止措置の概要
    • 作業員が特別な教育を受けている旨の説明
    • 作業期間
    • 施工業者名と現場責任者名
    • 石綿作業主任者の氏名
    • 現場への立ち入りを禁止する旨
    調査の結果、アスベストが使われていないとわかった場合は、使用していない旨の掲示。

  4. 04足場の組み立て 解体前に、アスベストやホコリの飛散を防ぐための足場と養生シートを設置します。
    作業レベル1の解体工事では前室や集塵・排気装置の設置、作業場の隔離が必要です。作業場や前室部分は負圧に保ち、粉塵を外部に飛散させないようにします。

  5. 05飛散防止剤をまく アスベスト除去工事は、水や飛散防止剤をまき作業部付近の湿潤化をおこなったうえで丁寧に実施します。飛散防止剤は、人体への被害がなく保護メガネに付着しても簡単にふき取ることができる無機系薬剤が使われます。

  6. 06アスベストの除去、袋詰め 除去したアスベスト含有建材は破れないプラスチック袋で二重にこん包するか、堅ろうな容器に密封して保管します。その際、内容物がアスベスト廃棄物であることを明示します。
    除去したアスベストを圧縮して、容積を半分近くに縮小させることもあります。

  7. 07周辺のアスベスト除去作業 最後に使用器具に付着したアスベストを除去して、作業場所内を清掃します。集めたアスベスト廃棄物は最終処分場へ運搬して、足場や養生シートも撤去します。
    なお、除去等したアスベストの運搬・処分は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託して、適正な処理方法で処分されたか確認する必要があります。
    適正処理の確認に使われる伝票(マニフェスト)は、5年間の保管義務があります。

石綿を使用した建物の解体の流れと費用の目安、注意点まとめ
アスベスト含有建材を使った建物の解体作業は、発塵性の高さを基準にしてレベル1から3に分けられています。
レベル1や2に該当する解体工事では、着工前に届出が必要です。作業においては、厳格なアスベスト飛散防止対策と作業労働者のばく露防止対策が求められます。
アスベスト含有建材の撤去費用は、おおよそ2万~8.5万円/㎡(処理面積)が目安です。ただし、諸条件によって大幅に変わるので必ず見積もりを取って確認しましょう。